黒い草原を離れたブダナシャは、東へ向かって長い旅を続けた。やがて彼女は、一年を通じて雪の降る谷へ辿り着いた。谷の中央には、屋根を持たない白い城塞都市が築かれている。門番の姿はなく、子供たちが走り回る姿もない。ただ家々の軒先には白い灯火が一つずつ吊るされ、人がその下を通るたび、見えない帰還者を迎えるかのように微かに揺れていた。
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この都市では葬儀を行わないのだと、住民たちは語った。死者の名を白い灯に記し、月末の夜になると、その者を幻影として家へ帰すのである。最初は慰めに過ぎなかった。しかし年月が経つにつれ、それは習慣となった。亡き父母を待ち続ける者もいれば、新しい家庭を築くことを拒む者もいる。故人が暮らしていた家から一歩も離れず、永遠に終わらない別れの中で生きる者さえいた。
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ブダナシャは一軒の古い家で、一人の少女と出会った。彼女の兄は七年前に亡くなっており、少女は毎月二人分の食器を用意していた。その夜、兄の幻影は生前と寸分違わぬ姿で現れた。笑い、語り、現実には存在しない食事を口にすることさえできる。少女は涙を流しながら、兄が自分を覚えているかと尋ねた。幻影は頷いた。しかし少女が次に、「それなら、どうしてずっとここにいてくれないの」と問い掛けたとき、幻影は答えなかった。
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ブダナシャは戸口に立ったまま、二人の間へ入らなかった。それは彼女が決めるべき問いではない。死者は去るべきなのか、生者には愛する者を引き留める権利があるのか。そんな問題を天秤で単純に裁くことなどできなかった。しかしその夜、彼女は都市中央の白い灯火が少しずつ暗くなっていることに気づいた。幻影を呼び戻すたびに、その魔術は生者がまだ生きていない未来の時間を燃料として消費していたのである。
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城主は事実を否定しなかった。誰も強制されているわけではない。皆、自分の意思で時間を差し出し、もう一度愛する者に会っているのだという。しかしブダナシャは、最も貧しい者ほど頻繁に灯をともしていることに気づいた。親しい者を失う機会が多く、孤独を恐れているからである。だから彼女にとって「自分の意思」という言葉は、またしても容易には扱えない重さを持っていた。それでも今回は、すぐに魔術を行使しなかった。
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彼女は都市中を歩き、毎晩灯をともす者たちに尋ねた。もしある日、白い灯が永遠に消えてしまったなら、何を失うことが最も怖いのか。声を失うことだと言う者がいた。笑顔だと言う者もいた。その人が座っていた椅子だと答える者もいた。長い沈黙の末、一人の住民が言った。「この先も生きてしまったら、死んだ人を裏切ることになる気がする。」その言葉を聞いた瞬間、銀の天秤がひとりでに彼女の手元へ現れた。
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天秤の両端には「留める」と「手放す」という文字が浮かんだ。しかし、どちらにも重さはなかった。ブダナシャは理解した。本当に救うべきなのは死者ではなく、生き続けることを罪だと思ってしまった人々なのだ。白い灯を破壊すれば、彼らから悲しむ権利を奪ってしまう。何もしなければ、都市は未来を過去へ差し出し続ける。彼女が必要としていたのは、哀悼を奪わず、未来も売り渡さない別の方法だった。
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第九対の翼が開かれた。すべての白い灯が消費していた時間が、一斉に停止する。続いて第十対の翼が都市の空を覆い、亡者たちの幻影は初めて、生者の未来を燃料とせずに存在できるようになった。幻影は少しずつ透明になっていった。それでもすぐには消えない。それぞれの家族には最後の一夜が与えられた。言えなかった言葉を伝えるために。あるいは何も言わず、ただ同じ場所に座るために。
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少女は兄へ尋ねた。「いつかあなたの声を忘れてしまったら、怒る?」幻影は首を横に振った。そして言葉の代わりに、そっと妹の頭へ手を置いた。少女は長い間泣き続けた。しかし最後には微笑んだ。「これからもあなたを想う。でも、あなたが一度も見たことのない海を見に行きたい。」その瞬間、幻影は無数の白い光へ変わった。誰かに殺されたのでも、誰かに救われたのでもない。ただ、彼自身の旅が終わったのである。
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ブダナシャは白い灯をすべて消しはしなかった。ただ、それらを普通の灯火へ変えた。死者を呼び戻すためではなく、生きている者の道を照らすための灯にしたのである。都市では初めて、灯の下で店を再び開く者が現れた。新しい家へ移る者もいた。歌を学び直す者もいた。死者は忘れられたのではない。むしろ幻影によって自らの存在を証明する必要がなくなったことで、彼らは記憶の中に静かに残れるようになった。
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城主は、それでは人々に死を受け入れさせたことになるのかと尋ねた。ブダナシャは首を横に振った。死は、人間が受け入れるかどうかとは無関係に訪れる。本当に難しいのは、悲しみの中にあってもなお、自分自身に明日を許せるかどうかだという。亡者を忘れろとは言わなかった。それもまた残酷だからである。ただ、去った者を愛した証として、自らの人生まで止める必要はないと告げた。
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旅立つ日、少女は城門まで彼女を見送りには来なかった。彼女はずっと遠く、城の外へ向かって一人で歩き始めていた。兄が一度も見たことのない海を見に行くのだという。そして兄の代わりに、この世界がどれほど広いのかを見てみたいのだと。ブダナシャは雪の上からその背中を眺めた。自分自身もまだ「家」がどこにあるのか知らない。それでも初めて、そのことを急いで解決する必要はないと思えた。家を探すということは、まだ見たことのない場所へ歩いていくことでもあるのだから。
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白い都市は、その後も毎夜灯をともした。ただし、その灯はもう死者の帰還を待つものではなかった。誰かが灯の下で泣き、誰かが食事をし、誰かが初めて見知らぬ人へ亡き家族の名を語る。ブダナシャは死者を連れて行かなかった。聖跡を残すこともしなかった。ただ、明日を拒んでいた一つの都市を、再び生きている人々自身の手へ返したのである。
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